あるショッピングモールでのことでした
約束の時間より早く到着したので
ベンチに座ろうとしましたが
空きスペースがないようで
少し離れた場所に立っていました
ボンヤリしている私に
高齢の女性が左脇の荷物を足元に移し
隣りを空けて
私にかけるよう声をかけてくださったのです
ありがたく好意を受け お礼を言い
よくある世間話をしたあと
20分ほど その方のお話を聴きました
昨夏の豪雨で自宅を失ったこと
何も考えられず
ひとりで仮設住宅に閉じこもっていたこと
そんな数か月がやっと変わったのだ・・・と
きっかけは娘さんからの電話で
「(ショッピングモール)へ行こう」と
誘われたことだったそうです
過去何度も同じように言われても
その気になれなかったが
ふと このままじゃだめだ と思えたのです
自分でも不思議なほど 切り換わって
今こうしています と
涙声でゆっくりと話されました
私はただ聴くばかりでした
うなずくだけでした
そして携帯電話が鳴り
「娘からです」とニッコリし 席を立たれ
「今日は出てきてよかった
あなたに会えて・・・つまらん話を
よー聞いてくださってありがとうございました」と
右手を出され 握手をしました
復旧、復興のニュースを目にするにつけ
あの方はどうされているだろうかと案じ
心から幸運をお祈りしています
平成三十一年三月五日
庭に「ふきのとう」が生れました
童謡『どこかで春が』を口ずさんでいます